SNSで話題になっている衝撃的な漫画『みいちゃんと山田さん』。
私もsnsでスクロールしている時に目に入り、最初はキャバ嬢になったみいちゃんが奮闘する日々を描いた漫画か、、という認識でしかなかったものの、何度も少しずつ場面を変えて流れてくる広告に続きや結末がどうしても気になってきて、いつもまにか心を奪われていました。
こんなことが現実に起こるのか?と思うかもしれませんが、日々、精神や知的、発達に障害をもつ方と接する職業をしているわたしには、本人の生きづらさや周囲の葛藤、社会的な問題、どれも大きく頷ける現実味のある話だと思いました。
この漫画についてもっと知りたいと思い調べていくうちに、モデルとなった人物がいるという記事にたどり着き、皆様にシェアしたい一心で記事を書かせていただきました。
是非、最後までご覧になってくださいね(^^)
【みいちゃんと山田さん】実話って本当

「私の昔の知り合いです。妙に距離感が近かったり、作中のみいちゃん同様、DV男と付き合っていたりする女性でした。グラスを割るなどミスが多く、遅刻もよくしていました。でも何故か憎めない、そんな子でした。」
このように彼女のことを語る作者の亜月ねねさん。
この物語には明確に意図したモデルとなっている人物がいるようです。
舞台は令和のリアルタイムな今、ではなく、少しだけ遡った2012年。つい最近のように思う方もいると思いますが、新型コロナウィルスの流行や、AI技術の急激な発展など、ここ数年で大きく変化した世界を目の当たりにすると、夜の世界もまた、一昔前、の話といってもいいのかもしれません。
結論から言うと、「みいちゃんと山田さん」に出てくる事件や舞台は全てをそのまま写したものではなく、あくまでフィクションとされています。
ただ、作者が実際に出会い心に深く刻まれた彼女のことを思い、書いた事は間違いないでしょう。所々、現実も交えているのかもしれませんが、この話は実際の人物や事件を特定するにはあまりにも重過ぎる、、作者の亜月ねねさんがこれ以上多くを語らない理由がここにあるのだと思いますが、それでも語ってくれた僅かな内容は次への期待感と読者の想像を掻き立てるには十分だと感じました。
読者としても、この物語が現実にあることだと認識すると、不安や恐怖が強くなってしまうこともあるかもしれません。最後まで安心して読み進めることができて、受け止めることができるように、明確に示さない絶妙なラインで、現実と非現実を織り交ぜて書かれているのかもしれませんね。
【みいちゃんと山田さん】実話を元にしたストーリー概要

主人公のみいちゃん、生い立ちから結末まで衝撃的な点が至る所に散りばめられています。
物語の冒頭に衝撃的な死という出来事を持ってきたことで、これは恋愛?ミステリー?サスペンス、実話?一つのカテゴリーでは語り切れない要素を持ちお合わせている、謎の期待感に溢れてきます。
主人公のみいちゃんと同じ歌舞伎町のキャバクラで働く山田さんとの物語。
主人公であるみいちゃんは、自分の名前と小学生低学年で習う程度の漢字は読み書きできるものの、お客さんの名刺に書かれてある字が読めなかったり、適切な言葉で物事を表現することも難しく、コミュニケーションも苦手、おそらくなんらかの障害を持っていると予測される女性です。
そんな彼女が新宿歌舞伎町のキャバクラで働くことになり、案の定たくさんのトラブルを巻き起こしていきます。同僚にも冷たくされたり、馬鹿にされることが多い中、最後までみいちゃんに寄り添ってくれた山田さん。
<みいちゃんと山田さん>というタイトルそのものから感じられる対極なふたり。みいちゃんという幼さと対比した賢さを見事に表現されているとここで感じます。
みいちゃんの過去や付き合っているDVの彼氏に対しても、冷静に話を聞き、判断して行動していく山田さん。みいちゃんのプライドの高さも考えたうえで、それでも素直に、みいちゃんの心に響くように伝える、かかわることができる山田さんは、高い人間性を持っているのだなと感じてしまいます。
みいちゃんが彼氏に殴られて傷をつくったり、万引きして通報されたりという事件は続きますが、衝撃的な出来事どれをとっても、障害や特性からもたらされてしまうこと、そして周囲の人や社会が問題となって起こること、すべてが私にはリアルに感じられます。
正直、どこまでが現実で、どこまでが創られた物語なのかは、作者にしかわかりません。
一部は現実にある話、そして起こりうる可能性は十分にある話、として読み進めていくのがよいのではないでしょうか。
【みいちゃんと山田さん】実在したであろう登場人物の分析

「話していても抜けている感じの子でした。明るいかと思うと、鬱っぽい時もあって…」
作者が語るモデルとなった彼女、言葉では語れない人を惹きつける何か、を持っていたのではないでしょうか。
だからこそ心に深く残り、こうして多くの人が目が離せない、決して他にはない物語へと繋がったのでしょう。
作品の舞台となった2012年の新宿キャバクラ店、作者はこう語っています。「今と違って、夜職の扱いは、アングラ感が強かったです。一部の人は華やかでしたが、働いている女の子は訳ありな人が多かった。今は夜職がカジュアルになりましたよね。snsがまだまだ黎明期で、変な子がいても不思議ちゃん扱いされる、いろいろなことが手探りの時代。そんな2010年代の独特な雰囲気を再現したかったです。」
みいちゃんと山田さんに登場する人物たちは、その個性をわかりやすくリアルに表現されています。
同じキャバクラで働くモモさんは、あからさまにみいちゃんをいじめますが、小さな変化や違和感、異変に気付く洞察力にたけています。表面上には意地悪な人に見えますが、このような人に助けられる場面も実際には多々あるのだと思います。みいちゃんだけではなく、ほかの人に対してもズバズバ言うので、みいちゃんが嫌いというわけではないのではないかな、、って思いたいです。
同じく同僚のココロちゃんは、みいちゃんを下に見ることで自分を安心させることができるので、自分にとってはみいちゃんは必要な存在だと認識しています。これは正直、女性によくある話だと思います。自分より劣っている人と並んで歩いたり、一緒に合コンへ行こうとする、、なんて珍しくない話だし、だれもが一度は心の中に秘めたことのある感情なのではないかな、と。
ニナちゃんは、昼職からキャバクラに転職してきた、おそらく発達障害がある女性。知的障害が重いほど生きることが大変だと思われるかもしれませんが、実は知的障害がない発達障害がある方のほうが、生きづらさを強く感じ、鬱や精神疾患など二次障害を引き起こす可能性が高くなるといわれています。すり減った自己肯定感、常に感じている不安や恐怖、理解、共感できる部分が多くありました。実はこのタイプの方が夜の世界には多いのではないかなと感じています。
みいちゃんの彼氏マオくんは、読んでいて腹が立つほどの完全なるDV男です。自称IQ130のギフテッドと言っているようですが、みいちゃん以外の人間にはペコペコしたり、明らかな異なる人物像を持ち合わせていて、彼も実は自己肯定感が低く、またなんらかの障害や特性があることが容易に想像できます。そして、依存しあっている。なぜか引きあってしまうのですよね、このような二人って。そして出会ったら最後、地獄に落とされる関係性であることは周囲の人間には最初からわかってしまうものの、それでも別れられない、なんとまぁ残念なお付き合いになってしまうのですよね。。
【みいちゃんと山田さん】犯人はマオくん?みいちゃんのDV彼氏マオくんのクズっぷりをまとめてみた。 | マンガ人生の通り道
どの人も、実際に存在していてもおかしくない、人物像です。本当にリアル。
そんな個性強めの登場人物のなかで、みいちゃんは、純粋で真っ直ぐ。
トラブルは起こすし、考えられない行動をしてしまう事が多々ありながらも、人を疑ったり、陥れようとか、誰かに対して意識的に嫌がらせなどは決してせず、誰かを思う優しさも内に秘めています。
しかし、物語から読み取れる事は先天性の知的障害、発達障害、そして環境に適応できずとても生きずらい人生を歩んできたということ。
みいちゃんは、生い立ちや性格(特性)からいじめやトラブルに溢れた幼少期を過ごして来ました。何も障害がなければ、子供の頃にした失敗や様々な経験を元に、同じ事を繰り返さないように学習していきます。いわゆる、それが発達というものなのですが、大人になったみいちゃんは変わらず事件やトラブルまみれており、ただの波乱万丈な人生とは言えない、障害が隠されているのでは?ということが理解できます。
ただ、一部分、顕著に発達してしまった部分がありました。
それが【性】です。
それは確かに窮地に立たされた彼女を救ったこともあったかもしれませんが、良くも悪くも間違った成功体験を積み重ねてしまった(障害分野ではこれを誤学習と言ったりします、、。)ことで、最悪の結果を招いてしまうことになったのだと思います。
無意識に、無自覚に、女性であることを武器にして生きてきたみいちゃんは、キャバクラという世界にたどり着いたのも、決められていた運命なのかもしれません。
【みいちゃんと山田さん】実話を元にした結末とは

物語の冒頭で12か月後に亡くなると明かされます。みいちゃんが死ぬ?という最悪とも思われる結末を敢えて先に描いておくことで、何故?という興味をそそられると同時に、後に点と点が繋がっていく過程をじっくり味わっていけることを期待したくなります。
作者の亜月ねねさんは、そのモデルとした彼女がどうなったのか、今現在どうしているのか、などは明言しておりません。
なので、先ほどもお伝えしたように、この結末はあくまで創られた物語である、という認識を持つのがよいと思います。
この物語とは関係のないところで、女性が無残に殺害されたり、死体を遺棄されるような事件が現実の過去に起こっています。そんなリアルな事件を思い起こされるため、一部では結末さえも実話だ、と思われてしまうのかもしれませんね。
【みいちゃんと山田さん】実話から生まれる作品のテーマ

性を生きる手段としてしまったことで、最悪の結果に結びついてしまった、そのような簡単な話ではないのがこの物語の本質だと思います。
障害があるであろう一人の女性が抱える問題、リスク、社会という大きな背景すべてにおいて考えさせられる物語なのです。
学校、キャバクラ、社会というそれぞれの世界でのとらえ方があり、大きく頷ける部分が多々ありました。この最悪な結末を迎えないように、それぞれの世界でどうすることが最善だったのか、そのような視点を持つことが、よりよい未来へとつながる重要なポイントではないでしょうか。
障害があるであろう人に対して、周囲がどれだけ理解しているのかという事、これはただ単にその人へ理解、だけではなく適切な場所、道へ導くことの重要性を表します。
ハッキリ言って、現実にこのような方を一人で支えようとするのは不可能に近いです。
5話で登場するみいちゃんと同じ知的障害を持つムウちゃんという子が出てくるのですが、この子は万引きで逮捕され刑務所に入ったことがきっかけで必要な社会的機関に繋がり、後に適切な支援を受けられるようになっています。これが、当事者にとって本当に正解なのか、幸せなことなのかは本人の考え方次第なのかもしれませんが、最終的には一番安全や幸せが確保される道なのだと思います。
元々、同じ障害を持っているというスタート地点は同じだった二人。しかし、生きていく中で触れ合った環境や周囲の人の影響で、幸せにも不幸にもなれる自分で選べるようで選べない、そんな理不尽な世界線を感じてしまいます。
本人が理解することが難しい部分を、周囲がきちんと正確に捉えてサポートできる世の中づくりのきっかけになる事を期待したい。
そして、例え障害がなくても、女性であると言う事だけで、もしかすると起こりうることもあるかもしれない、、そんな風に頭の片隅に置くことで、この物語と重なるような出来事に遭遇した際に、違和感に気付けたり、早いうちに対処して避けることができるといいな、とも思います。
【みいちゃんと山田さん】実話からあなたに伝えたいこと

実話と非現実が織り交ぜられて構成されている、みいちゃんと山田さん。
あなたは、この物語を読んだ今、どんな事を感じているでしょうか。
舞台は新宿のキャバクラ店ですが、少し見方を変えればどこにでも存在してしまう、人対人の感情のぶつかり合い。醜い部分や触れることがタブーとされてきた性的な部分、すべてがリアルで、もしかすると世の中のどこかを探せば実話、となるような、そんな物語。これがみいちゃんと山田さんです。
人として、女性として、障害の有無にかかわらず生きづらさを抱えてきたひと、、これからは本当に自分を大切にする生き方をしてほしい。生まれてきたことを後悔しないように。
つらくて苦しい出来事があっても、作中での山田さんの言葉のように
<おばあちゃんになってそれまでのことを振り返ってさ、死ぬ間際にはまあまあ良い人生だったなって思えたらいいよね>
って、そんな風に多くの女性が感じられることを願わずにはいられません。
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